現在、老化細胞は老化研究の中心にあります。例えばGoogleやAmazonなどの大企業もこの研究に巨額を投じています。彼らの目指すところは老化細胞を選択的に除去する薬、Senolyticsの開発です。しかし一方ですでにある薬を老化細胞除去に利用できないかという研究もあります。英語ではこのような薬の使い方をRepurposeと言っています。すなわち目的を見直す、別の目的で利用する、という意味です。

例えばアスピリンは当初痛み止め、解熱剤として開発されました。しかし同じアスピリンを少量投与することで血液をサラサラにする効果があるということがわかり、心臓や血管に問題がある患者に投与されています。これもrepurposeといえます。このような薬の転用にはいくつもメリットがあります。まずすでに安全性が確認されていること、そして多くの場合特許が切れているということです。切れていなくともじきにに切れ、さらに開発費もゼロからということでもありません。前回、老化除去にダサチニブが使えるという話をしました。この薬の特許はまだ切れていませんがもうすぐ切れます。そして血液のがん患者は毎日この薬を飲みます。そしてそれによる副作用もおおむねはなくしています。もしこの薬で健康寿命が延びるならばこんなにいいことはないのです。(ダサチニブは老化細胞除去を目的とした場合毎日飲む必要はないと考えられています)

さて、本題に戻りましょう。再利用ではなりませんが、Senolyticsで現在注目されているものにフィセチンというフラボノイドがあります。この物質はイチゴに多く含まれています。一部の研究によると少なくともマウスに対しては老化細胞除去能力としてダサチニブ+ケルセチンに勝るとも劣らない効果が確認されています。さらに数多くの人間に対する治験が行われています。

しかしメトホルミンの例で書いたように問題があります。フィセチンには特許がありません。さらに極めて安価に手に入ります。製薬会社としては儲からないのです。果たしてどうなることか…

治験の一例 2022年暮れまでにこの治験は終わる予定です。体重1kgあたり20mgのフィセチンを二日飲むだけです。老化細胞が除去されればしばらくは老化細胞が少ない状態が続くので飲み続ける必要はないと考えられています。体重60kgであれば1.2gを二日にわたり取ります。サプリとしては数千円として売られています。もしこれらの治験でいい結果が出ればすごいことになるでしょう。

By MN

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