タウリンで長生きするの?

2023年6月8日に米国コロンビア大学の研究チームがタウリンとマウス、サルなどの健康と健康寿命について論文を発表しました。タウリンというと日本ではドリンク剤に含まれていることをご存じの方が多いでしょう。そこで本記事ではタウリンについて私の知ることろをご紹介します。

まず論文の衝撃的な内容です。この論文によれば「中年」以降のマウスやサルにタウリンを少し余分に与えると、マウスのオスは寿命が10%、メスは12%伸び、サルの場合も肝機能や血糖値、骨密度、筋力などが改善したということです。サルの場合は寿命が長いので、タウリンと寿命についての関係はまだわかっていないそうです。

タウリンとは
タウリンはアミノ酸のようなものです。通常のアミノ酸と違い、タンパク質合成には使われません。人の場合、体内でタウリンは合成されますが、不足分は食事から取る必要があります。このタウリンですが、皆様もご存じの通り、栄養ドリンクに配合されています。「タウリン1000mg配合!」とか「3000mg配合!」というキャッチフレーズを聞いたことがあるでしょう。数グラム程度のサプリによる摂取は問題ないようです。実際、余分にとったタウリンは腎臓を経由し、排出されます。

また、日常食事から私たちはタウリンを取っています。特に貝類、タコやイカ、魚の血合いに多く含まれていています。肉類にはあまり含まれず、植物には海藻を除きほとんどありません。ですから日本人は比較的多くのタウリンを摂取しているようです。日本人の寿命が長いのはタウリンの摂取量にあるという論文は過去にもいくつかありました。

タウリンの含有量
もっともタウリンが多い食べ物はカキなどの貝類です。100gあたり500~1000mg含まれているそうです。ただしタウリンは水によく溶けるので調理方法によって大きく損なわれることが知られています。魚の場合100gあたり数十mgから血合いなどの場合は数百mg程度だそうです。ですからドリンク剤のタウリン含有量はカキであれば100g以上に相当します。

引用元 http://www.mac.or.jp/mail/200701/01.shtml

コロンビア大学より前の研究
上のグラフを引用した記事にあるように、死亡率とタウリン摂取量には逆相関の関係があります。すなわち、タウリンを多くとると死亡率が下がります。このような研究は過去にも複数あります。実際にコロンビアのチームによれば研究のきっかけは過去のタウリンと死亡率の研究があったということです。

このグラフは横軸に尿に含まれるタウリン量、縦軸に死亡率をとっています。横軸は対数です。日本人はグラフで感じるよりももっとタウリンを排出(食べている量が多い)していると思われます。(引用元 http://www.mac.or.jp/mail/200701/01.shtml

コロンビア大学の研究のポイント
多くのメディアがこの研究を記事にしていますが、いくつか重要なポイントを落としているので、簡単にまとめておきます。

  • 上に書いたようにサプリとして経口投与されたことで寿命、健康寿命が延びた
  • 老化細胞が減った
  • 中年以降でも効果がある

老化細胞が減ったというのは重要な点です。老化細胞とは活動を停止した細胞のことで、ゾンビ細胞とも呼ばれています。死んでもないけども役立たずの細胞です。細胞は寿命を終えると免疫細胞が片付けます。しかし年齢とともに免疫力が低下し、老化細胞をきれいに片づけられなくなってしまいます。その結果、免疫は老化細胞を攻撃し続けます。なぜならいくら攻撃しても老化細胞が消えないので、免疫は弱いながらも攻撃を続けるわけです。そして結果として慢性的な炎症が起こり、その副作用として老化が進むと考えられています。そして今世紀に入りこの「老化細胞をどうやって取り除くか」が一つの大きな課題となっているわけです。
さらにコロンビア大学の研究によればこの老化細胞が減った以上の効果があったということです。(実験ではダサチニブという抗がん剤とケルセチンというフラボノイドを投与したものよりもタウリンを摂取したマウスのほうが健康的になったということです=タウリンには老化細胞を除去する以外の効果があったと著者が主張しています)

タウリンをどれだけ取るべきか
こういう研究結果を知ると自分でも試してみたくなるものです。多くの場合このような研究で使われている薬は簡単には手に入りませんが、タウリンであれば安くて簡単に手に入りそうです。そこでこの論文の筆頭著者がテレビのインタビューで何と答えているかというと「人間ならば一日3-5グラム程度だろう」・・・ドリンク剤でタウリンを多く含んでいるものと同程度です。

タウリンの医療現場での利用
実はタウリンはドリンク剤だけではなく、医療現場でも使われています。適用分野は肝疾患、うっ血性心不全、そしてミトコンドリアの異常による症状の緩和です。前者では一日3g(三回にわけて飲む)、後者では最大で一日12gです。価格ですが前者の場合保険を適用すればおそらく1か月1000円程度だと思われます。そう、安いのです。

ではどうするべきか
日本人の魚介類の摂取量は年々減っています。ですから魚介類を多くとりましょう。上で紹介したリンク先記事によれば一日300mgを魚から取ると効果が出るのではないかということです。これならば行けそうです。

ちなみに私の場合は薬剤師にタウリンの粉末が買えるかどうか相談しています。ダメもとで。

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