年齢と独創性

一般的に年齢とともに独創的な仕事をしなくなるといいます。実際はどうでしょうか。そしてその理由は何でしょうか。例えば物理や数学の世界では多くの若者が新しい理論を発見します。ガロアというフランスの数学者は20歳で亡くなりました。女性をめぐる決闘で命を落としています。しかし彼はガロア理論という非常に重要な数学に貢献しています。1920年代に完成された量子力学という物理理論も「少年物理学者」と呼ばれた若い人たちが発見・完成しています。彼らは20歳代前半から後半の物理学者です。パウリ、ディラック、ハイゼンベルクなどです。

ではどうしてでしょうか。

私は若い人たちには広範な知識がまだ備わっていないからだと思っています。実際に若くして大成功をした学者の多くは年齢を重ねるとともに独創的な研究をしなくなります。もちろん例外はありますが。例えばアインシュタインも40歳を過ぎてからほとんど新しい仕事をしていません。あの天才でもです。

具体的に見ていきましょう。19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて当時の物理理論では説明できない様々な現象が発見されました。例えば光という波動はどうも普通の波とは違うらしいとか、エネルギーのやり取りはどうもとびとびの値しか取らないらしいとかです。そして多くの優秀な物理学者たちが今でいうところの古典的な物理学でそれらの現象を説明しようとしました。なかにはかなりいい線をいっているものもあったのですが、完全な説明はできませんでした。

そこで若者の登場です。若いので知識が浅いです。難しいことは知りません。ですから彼らは既存の理論をこねくり回して新しい現象を説明しようなどとははじめから思わなかったのです。いきなり新しい理論をちゅうちょなく受け入れ、構築したのです。

これが独創性につながっていると私は思います。

しかし年齢により知識が増えて、創造性にマイナスに働くかどうかはやはり個人差が大きいです。ピカソが高齢になりこんなことを言ったそうです。「若くなるまでに時間がかかった」実際彼の若いころの作品は古典的でした。

そうだ、私もそろそろ若くなるぞ!

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