細胞は生まれてたあとしばらくすると老化し、活動を停止します。このサイクルは通常年単位です。活動を停止した細胞は免疫が掃除をして、除去されます。しかし年齢とともに免疫力が弱まり、最後の掃除ができなくなります。この生き残った細胞を「老化細胞」と呼びます。細胞が老化することを「細胞老化」といいます。
2010年前後からこの細胞老化が注目を浴びるようになりました。なぜかというと生物が老化する原因は活動を停止したにもかかわらず免疫が体内から除去できずに居座った老化細胞にあるであろうことがわかってきたからです。ちなみに老化細胞は俗に「ゾンビ細胞」と呼ばれています。死にきれないからです。
年齢とともに老化細胞の数は増えます。しかしその数は高齢者でも1%に満たないといわれています。にもかかわらずこのゾンビ細胞が人体に大きな影響を及ぼすそうです。その理由は老化細胞が免疫系に「自分を除去してくれ!」という信号を出し続けるのですがその信号が周りの細胞にとっては非常によろしくない存在だからです。さらに免疫は老化細胞を掃除できませんが、弱い力でずっと攻撃を続けます。これらが老化細胞の周辺の健康な細胞、組織に炎症をはじめとする悪影響を及ぼすのです。
米国のメイヨークリニックでは老化細胞に関連したいくつもの実験を行っていて、老化細胞の悪影響とその治療について大きな功績を残しています。以下、オリジナルの論文の引用はしませんが概要です。(各論文は別の記事で紹介する予定です)
- 遺伝子操作で、ある薬品を投与すると老化細胞が死滅するように改変したマウスを作りました。高年齢になったマウスにその薬品を投与するとそのマウスが若返りました。
- 放射線をマウスにあてると老化細胞が増えます。その老化細胞が多くなったマウスの脂肪を若いマウスに移植すると、そのマウスの老化が進みました。
次回はこの老化細胞を選択的に除去(正常な細胞には影響を及ぼさずに老化細胞のみを除去するという意味)する「薬」の発見と、その結果としてマウスが若返り、寿命が延びるという話をする予定です。