前回、全国に張り巡らされているインターネットの回線を流れるデータが偏っていて、その結果としてインフラが非効率的である話を書きました。(前回の記事)今回は集中と比べ分散の別の視点からみた合理性に経済的な側面に視点を移して説明します。
現在クラウドは少数の巨大企業により支配されています。GoogleやAmazon、マイクロソフト、メタ、Appleなどがそれらです。これらの巨大企業の時価総額はそれぞれおおよそ100兆円です。(2022年時点では円安のためさらに時価総額は上がっています)これがどれくらいの規模かというと、世界3位の経済大国日本の国家予算程度です。きわめて異常だと思います。
さて、自由経済圏の原則として独占的な経済活動を禁止しようという考えがあります。これは一部企業が市場を独占することで消費者が被るデメリットを回避しようという考えに基づいています。独占禁止法は競争原理に基づいた経済活動を促進するために作られた法律です。これが原則なのですが、だれがどう見ても現在のインターネット市場は一部企業により独占されています。
例えば動画配信を見てみましょう。YoutubeはGoogle(アルファベット社)の子会社です。この巨大企業が動画配信をほぼ独占しています。ですから消費者は彼らの言いなりにならざるを得ません。Youtubeから受ける収益についても、広告を取り除くサービスについても彼らの言いなりになっています。YoutubeがGoogleから分離されないのは自由競争を阻害していると言えます。(おそらくそういうことはないでしょうが、この記事がGoogle検索の対象にするかしないかも彼らが決められます)
かつて米国では国際線はパンナム社が独占していました。今では信じられないでしょうが実際に米国は法律を作り、他社の国際線参入を阻止していました。また、電話事業も日本同様AT&Tが独占的に事業展開をしていました。そしてこれらが1970年代、80年代に自由化されサービスが向上し、価格が下がりました。独禁法が適用されたからです。
現在クラウドでの集中は米国により支配されています。ですから米国にはメリットが大きくすぐに国際線や電話事業のように独禁法が適用されるとは思えません。しかし大きな矛盾があることだけは確かなのです。独禁法でより消費者よりの環境が整うことが難しいとしたら、私たちはどうすればよいのでしょうか。
そこで考えたのです。仮にクラウドに頼る必要がないインフラを私たち消費者自身が持てたならどうなるかということです。さらに私たち消費者がもつ小さなインフラを融合して新しい巨大インフラができたならばどうなるかということです。インターネットが発明され、普及途上の時に私たちは自由にこのインフラを使い、国や一部企業に支配されない世界を夢見ていました。しかし現実は以前と変わらないどころかより「集中した世界」が作られたのです。データの流れ、一部企業の影響力に関係なくです。
次回はその戦略について書く予定です。