久しぶりに自分で書いた論文を読み返し、いろいろと思い出されます。当時の私は物理の専門家と話すことができたことがとてもいい経験であり、思い出です。そこで思いつくままにその思い出と学んだことを書きます。
シュワルチルド半径について(1)で書きました。この計算は「私」の仮説で計算すると(1)で紹介した値や一般相対論での計算よりも三十数パーセント大きめになります。この計算を物理専攻の大学院生に見せたら、彼はすかさず「これはシュヴァルツシルド半径と呼ばれているんだよ」と教えてくれました。私はそういった知識が全くなかったのです。しかしこの半径が多分ブラックホールと関係していることだけはわかっていました。さすがに大学院生はちょっと数式を見ただけでそれが何かを言えるんだと感心しました。しかしよく話してみると彼はその事実を知っているだけであまり深くは理解していないことに気が付きました。知っているのと考えてみたころがあるのは違うのです。ちなみにこのころの私は自分の仮説を使った宇宙の仕組みを実感として感じていて、一般相対性理論を知らなかったにも関わらず、ブラックホールやその周辺の空間や光の速度がどのようなものなのかをイメージできていました。
一般相対性理論を専門に研究をしている物理学者とも議論をしました。その先生はいくつかとてもためになることを教えてくれました。一つ目はなぜ多くの物理学者が一般相対性理論に魅了されるかということです。「前提となる仮説がシンプルかつ分かりやすく、その後の数学的な展開が美しい。」そしてその先生はもう一つ私に重要な話をしてくれました。「奇抜なアイデアもいいけれど、そればかりをやっていると奇抜さが売りになるので注意しなくてはいけない。」
もう一人の物理学の先生は私にこう言ってくれました。「君は少し頭がおかしいと思う。君のこの理論が正しいかどうかはわからないが、でもよく調べて考えたものだ。さっき聞いたプレゼンもなかなかのものだった。正しいかどうかはわからないが、これ、何回もいうよ、間違っているかもしれないけど、でも結構面白かった。」
今回このシリーズを書いていて、自分がどのようなことを当時したかも思い出してきました。例えば水星の歳差運動の計算は私にとって非常に難しかったです。方程式を立てても厳密解がありません。ですから近似計算をする必要があります。この計算だけは数か月かけたと思います。そして近似解が見つかった時、それも実際に観測されている値と同じだとわかった時の感動は凄かったです。計算方法は忘れましたが、感動だけはよく覚えています。
そういうわけで思い出話でした。思い出話をするようでは先が思いやられます。しかし一方で、今でも物理の謎を解きたいと、寝る前には必ず考えます。ですから寝入りが毎晩とてもいいです。